「AI・レビュー時代」のコスメ購買行動を分析:世代別データで読み解く最新トレンド

tokila編集部

株式会社電通マクロミルインサイトと株式会社アイスタイルは、共同で実施したウェビナー「AI・レビュー時代、ブランドはどう選ばれるのか ―Z・ミレニアル・大人世代別 生活者のデータから読み解く最新購買行動―」の内容をまとめた調査レポートを公開しました。

このレポートは、ChatGPTやGeminiなどの対話型AI・生成AIの普及が、美容・化粧品領域における生活者の購買行動にどのような変化をもたらしているのかを明らかにする目的で実施されたものです。全国の15歳から59歳までの男女1,300名を対象とした「AI利用実態および美容購買行動調査」に加え、@cosmeメンバーへの最新調査、および@cosmeのクチコミデータベースのテキスト分析を組み合わせています。

AI時代もクチコミ情報が購買意思決定の主役に

「AI」ワード出現率が急増するも、購買決定での活用は限定的

@cosmeに投稿されたクチコミの分析によると、「AI」というワードの出現率は前年同月比で4.3倍に増加しました。この数字は、「広告」や「インフルエンサー」といった言葉に迫るほど、AIが生活者にとって急速に身近な存在になっていることを示しています。

クチコミにおけるAIワード出現傾向グラフ

クチコミにおけるワード出現傾向比較グラフ

しかし、美容に関する商品やサービスの購買ファネルにおけるAIの利用率を見ると、最も高いZ世代においても「知る・興味を持つきっかけ(認知フェーズ)」で15.9%、「比較・検討」で12.6%にとどまります。さらに、「決定・購入」の段階では9.5%に留まるという結果です。AIが情報ツールとして身近になりつつあるものの、美容の購買意思決定においては限定的な活用に留まっている実態が明らかになりました。

世代別の購買ファネルとAI利用率

AIよりクチコミを信頼する生活者の実態

「美容関連商品・サービスを選ぶ際、AI/クチコミ/インフルエンサーによる情報がそれぞれ異なっていた場合、どれを最も参考にするか」という設問に対し、「クチコミ・レビューを最も参考にする」と回答した層が40.2%と最多でした。

次いで「いずれも同程度に参考にする」が32.6%となり、「AIの情報を最も参考にする」はわずか8.4%、「インフルエンサーの情報を最も参考にする」は4.8%に留まっています。

情報源として参考にするもの

この結果から、生活者はAIの情報だけを頼りにするのではなく、AIで提示されたおすすめや診断結果に対し、クチコミをはじめとするリアルな体験談やSNSなど複数の情報源を掛け合わせ、多角的に情報を確認しながら購買判断を行っていることが見えてきます。

若年層で「バズ離れ」、AIは「自分に合う商品」探しのパートナーに

アイスタイルが2026年4月に@cosmeメンバーに対して実施した調査では、「SNSやYouTube・TikTokで『話題/人気/バズっている』化粧品を購入したいか」という質問に対し、2022年比で10代は-7.2pt、20代は-6.3ptと減少していることが示されました。

SNSやYouTube・TikTokで「バズっている」化粧品購入意欲

商品集中バズ傾向から商品多様化パーソナライズ傾向への変化

若年層を中心に「バズっている話題の商品」をそのまま購入するのではなく、自身の肌質や悩みをAIに伝えて、「自分に合うこと」を軸に商品を選ぶ人が増えています。AIの普及が、この傾向を後押ししているものと考えられます。

世代別AIプロンプトから見るニーズの変化

生活者がAIチャットに入力しているプロンプト(質問文)の分析では、年代ごとにAIとの距離感や求める役割が異なることが明らかになりました。

  • 10代: 「はじめてメイクします」など、最初の相談相手としてAIを“友達”のように活用する傾向が見られます。

  • 20代: 肌質や顔タイプ(ブルベ夏、ソフトエレガントなど)の自己分析情報を細かく入力し、自分に合う答えを徹底的に探しています。

  • 30代: 「30代の肌」「2000円以内」「グリセリンフリー」など、条件を絞り込み、セカンドオピニオン的にAIに裏付けを求める利用法が特徴です。

  • 40代・50代: シミ、肝斑、白髪など加齢による悩み解決や、「〇〇ブランドの広告費は?」といった裏側の情報まで探り、人に相談しにくいことを対話しながら納得して選ぶ傾向があります。

AIチャットにどんなことを入力しているか(年代別)

AIと美容部員は共存、購入後のサポートがリピーター育成の鍵

@cosmeのクチコミには、AIチャットを「購入前の比較」だけでなく「購入した後のサポート」にも活用した体験談が寄せられています。

例えば、「アディクション ザ アイシャドウ パレット」を購入したユーザーが、グラデーションが上手くいかず処分を検討していた際にAIに相談したところ、全色使わない塗り方を提案され、評価を★3から★5へ上げたという声があります。また、「タカミスキンピール」の最適なお手入れルーティンをChatGPTに組み立ててもらい、使用を継続している事例も見られます。

AIがリピーターを育てる事例(メイク方法)

AIがリピーターを育てる事例(スキンケア方法)

これらの事例は、これまで店員や美容部員に相談していた場面でAIが活用されていることを示唆しています。実際、AIを活用することで「店員・美容部員に相談する」ことが減ると回答した生活者は一定数(Z世代25.6%、ミレニアル世代24.5%)存在します。

一方で、AIは美容部員に完全に置き換わる存在ではないようです。韓国でのオーダーメイドファンデーション作りの体験談では、「AIのおすすめ1色と、店員が選ぶ2色を顔に塗って、定番色にない自分に合うベストな色に出会えた」という声があり、人とAIが協力して最適な選択を導き出す共存関係が生まれる可能性が示されています。

AI利用で減った/減りそうなことの世代別比較

AIと美容部員の共存事例

科学的根拠の発信と鮮度の高いクチコミがブランドに求められる

AIの普及は、化粧品ブランドの情報発信にも変化をもたらすでしょう。これまで専門的な論文や難解な科学的根拠、研究開発のバックデータは、生活者には届きにくい傾向がありました。しかしAIは、専門家向けの情報であっても、生活者の質問に合わせてそのロジックを分かりやすく伝えることが可能です。

@cosmeのクチコミには、「ケアセラ APフェイス&ボディ乳液」をなんとなく使っていた人が、AIに理由を尋ね、「ロート独自の処方や壊れた肌バリアを再構築する医学に近いアプローチであることに納得してリピートを決めた」という声があります。これは、購入前の情報収集ではなく、使用後に理由を確かめるというAIの使われ方を示しています。これまで埋もれていた情報がAIによって生活者に届きやすくなり、研究や開発を積み重ねてきたブランドの技術力がこれまで以上に評価されるようになる可能性が考えられます。

AIが埋もれていた情報を可視化する事例

AIによる商品開発への期待

今回の調査結果から、生活者はAIだけを頼りにしているわけではないことが示唆されます。AIに聞いた上で、実際に使った人の声も確認するという、両方を参照して判断する使い分けが定着しつつあります。

商品の購入検討時にクチコミの投稿日を気にする生活者は80%にのぼるというデータもあります。誰がいつ書いたものかを確かめた上で判断している実態が浮き彫りになりました。AIが答えを返す際も、その土台となるのは生活者が書いた一次情報です。AIが普及するほど、その情報の鮮度と量が問われることとなるでしょう。

クチコミの鮮度も重要

このことから、これからのAI時代に生活者から選ばれ続けるブランドであるためには、以下の2つの情報発信戦略が求められるとレポートでは結論付けています。

  1. 専門的な研究データや科学的根拠(エビデンス)の積極的な発信: AIを介することで、難解な情報も生活者に分かりやすく届くようになります。研究や開発を積み重ねてきたブランドの技術力や処方へのこだわりを定期的に情報発信することが、AIを通じた信頼獲得へと繋がるでしょう。
  2. 生活者からの「熱い一次情報」を引き出すための独自ベネフィット訴求: 「コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアクリーム」の「3時間多く眠ったような肌」や、「RMK ラスティングジェルクリーミィファンデーション」の「素肌っぽいをつくりこむ」といった、商品独自のベネフィットを一貫して伝え続けることです。他にはない固有の訴求ワードが、生活者の体験談として言語化され、蓄積されていく環境を整えることが、AI時代の資産になると考えられます。

本調査のデータを用いたウェビナー「AI・レビュー時代、ブランドはどう選ばれるのか ―Z・ミレニアル・大人世代別 生活者のデータから読み解く最新購買行動―」の動画を含む詳細な内容は、以下のページで公開されています。

本調査の主体は株式会社電通マクロミルインサイトです。調査はインターネットを通じて全国15歳から59歳の男女1,300名を対象に、2026年4月15日から4月20日の期間で実施されました。

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